そもそも「リンパ」にはどんな働きがあるの?
「リンパ」と聞くと、老廃物が流れていて、滞るとむくみや冷えにつながる……という知識を持っている人は多いと思います。でも実は「リンパ」は、人の健康や命に関係する、すばらしい働きを持っているそう! 福場さん、そもそもリンパとは何なのでしょうか?
「多くの方にとって、リンパとはおそらく体の中を流れるリンパ液のイメージでしょう。でも、一般的にリンパと呼ばれるものは、体中に張り巡らされた『リンパ管』とその中を流れる『リンパ液』、リンパ管の途中に存在してろ過装置の役割をする『リンパ節』、さらにリンパ管を流れる白血球の仲間である『リンパ球』のすべてを指します。これらは総合して『リンパシステム』と呼ばれることがあります」(福場さん)
一口で「リンパ」と呼んでいても、それほどの種類があるのですね!
「多くの方にとってリンパとは、このように『老廃物を運ぶ下水管』のイメージが強いのですが、実はリンパには生体防御の働きもあります。何から体を守っているかというと、がん細胞です。かつて、免疫学が対象としていたのは『菌』でした。でも、抗生物質が出現してから菌で死ぬ人は少なくなり、現在、私たちの敵はウイルスとがん細胞です。がん細胞は40歳を過ぎると毎日5000個生まれると言われていますが、がんを患わずにいるのであれば、それは白血球の一種であるリンパ球が働いているおかげなのです」(福場さん)
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がん細胞と闘う戦士、リンパ球の働きとは
私たちの体内では、毎日のように突然変異でがん細胞が生まれています。でも、それを日々退治しているのが、白血球の一種「リンパ球」だそうです。
「血液の中には、赤血球と白血球が含まれています。赤血球には酸素を運ぶ働きがあり、酸素で生きている私たちにとって大切なもの。赤血球は体内に25兆個存在し、体中の細胞に酸素を運んでいます。
一方、白血球は体内に2兆個存在していますが、主な役割は外から体内に入ってくる病原菌やウイルス、さらに体内で生まれるがん細胞を退治することで、別名・免疫細胞とも呼ばれています。白血球は『顆粒球』『リンパ球』『単球』の3種類に分けられ、それぞれが退治する“敵”が異なります。リンパ球が担当しているのは、がん細胞とウイルスです。がんには現在まだ決定的な薬がないため、がんと闘うリンパ球は近年ますます注目されています」(福場さん)
リンパ球は一体どこでウイルスやがん細胞を退治しているのでしょうか?
「白血球は『遊走する細胞』と呼ばれています。白血球のうち、わずか10億個が血管の中にいて、あとは血管の外、リンパ管の中や臓器に入って遊走します。そこで敵となるがん細胞やウイルス、菌などがいないかを見張り、見つけたときは退治します。闘いの場所の多くがリンパ節です。たとえば、扁桃腺はリンパ節のひとつですが、風邪をひくと腫れますよね。あれは扁桃腺の中で、白血球が病原菌と闘っているからで、闘いの現象として炎症や腫れ、発熱が生じるのです」(福場さん)
リンパ球は免疫システムの主役!
さらにリンパ球には2種類あり、それぞれで異なる役割があるそうです。一体どんな違いがあるのでしょうか?
「リンパ球には、主にリンパ球B細胞とリンパ球T細胞の2種類があります。血液細胞である赤血球と白血球は骨髄で生まれるので、白血球の一員であるリンパ球も骨髄で生まれますが、その一部は胸骨の内側に存在する胸腺と言う臓器に向かい、リンパ球T 細胞へと成熟します。リンパ球T 細胞になると、もうひとつのB 細胞とは異なる能力を持ちます。
リンパ球B 細胞は、異物が体内に入ってきたときに除去する『抗体(免疫グロブリン)』を産生するのに比べて、リンパ球T 細胞は異物となった『抗原』となる細胞の溶解をおこなう、いわゆる戦士のような活躍をします。つまり、免疫システムの主役としての地位を獲得するのです」(福場さん)
胸腺という臓器はあまり馴染みがないような……どんな臓器なのでしょうか?
「胸腺は、胸骨の内側にある、卵1個分くらいの臓器で、わずか45gほどしかありませんが、とても重要な臓器です。しかし残念なことに、胸腺は40歳で退化することがわかっています。40歳を過ぎると胸腺は縮こまり、機能しなくなっていく。そのため、40歳をすぎると免疫がぐっと落ちると言われるのです」(福場さん)
免疫力を上げるためのリンパケア
リンパ球がよりよく働ければ、免疫力が上がって、さまざまな外敵や異物から自分の身を守りやすくなります。そのために、リンパ液の流れをスムーズにすることは重要だそう。自分でできる免疫力アップのリンパケアを教えてもらいました!
【1:鎖骨をプッシュ】
「体の隅々から流れてきたリンパ液の最終到達場所が、鎖骨リンパ節です。鎖骨の上から、溝に4本の指を入れ、呼吸に合わせてゆっくりと、6回プッシュしてほぐしましょう。そうすることで、リンパ液が静脈と還流しやすくなります」(福場さん)
【2:耳の下を押して、首をさする】
「首の周りはリンパ節がとくに多い箇所。それは菌やウイルスなどの異物は、口と喉から入ってくることが多いから。敵を早めに撃退するために、リンパ球を含む白血球が闘う場所であるリンパ節が首の周りにたくさんあるのです。イラストの順で、耳の下から鎖骨に向かって、6回なでおろします」(福場さん)
【3:首の前面をさする】
「喉の両側面を矢印の方向に6回なでおろしながら、鎖骨のあたりに流していくイメージでおこないましょう」(福場さん)
【4:肋骨の下、お腹、そけい部をさする】
「免疫力アップのためには、右肋骨の下方にある肝臓、左肋骨の下奥にある脾臓を刺激しましょう。1→2の順にお腹をさすってほぐしたら、おへその両脇を通って下へ流し、最後に3の矢印の向きにそけい部をさすって流します」(福場さん)
リンパをケアすることは、ただの「むくみ取り」だけではなく、健康にもつながるのですね。リンパ球が、私たちの体を守るために適切に働けるよう、日々のケアを習慣にしたいところです。
イラスト提供/(社)アロマ・リンパセラピスト協会
■監修
福場 美知留さん
アロマ・リンパセラピスト協会 会長 美容・健康アナリスト
美容家プロフィール
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