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山岳氷河の融解、予想以上の速度で進行

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 最新の研究によると、地球温暖化による山岳氷河の縮小ペースが従来の予想よりも速いことが判明したという。

 カナダのバンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学の氷河学者ギャリー・クラーク(Garry Clarke)氏は、「(アラスカ州と接する)カナダのセントエライアス地域には、現在およそ453立方キロの巨大な山岳氷河が存在する。気候変動がそれほど激しくないと仮定した場合でも、2100年までに半分に減ってしまうだろう」と話す。

「しかし、これはまだ良い方だ」。クラーク氏によると、カナディアンロッキーのさまざまな地域で氷河がほとんど完全に消失し、残ったとしても現在の5~20%のサイズにまで縮小するという。「これからの100年は“北アメリカ西部から氷河がなくなった時代”として記憶されることになる」。

 ヒマラヤ山脈でも、溶けた氷河の表面にできる氷河上湖の観測から、融解ペースに対する懸念が報告されている。研究チームの一員でアメリカにあるコロラド大学環境科学共同研究所(CIRES)に所属するウリヤナ・ホロディスキー(Ulyana Horodyskyj)氏は次のように話す。

「氷河の減少というとほとんどの人は後退、つまり長さの減少をイメージするが、実は厚さも減る。融解プロセスを加速する要因の1つが氷河の上にできる湖だ」と述べる。「ヒマラヤ山脈の至るところで確認されており、まるで氷河を食い尽くす癌(がん)のようだ」。

 ブリティッシュ・コロンビア大学のクラーク氏は、「海水面の上昇という点では、世界の山岳氷河がすべて溶けたとしても影響は小さい。例えば、カナダ西部の氷河が消失した場合でも、海水面の上昇はわずか6.6ミリに収まる。心配するほどではない」と語る。

◆氷河の水

 しかし、氷河は天然の貯水装置としての機能を持っている。冬には水をため込み、夏にはゆっくりと溶けながら水を少しずつ流す。「現在その恩恵を受けている地域は、氷河がなくなってしまうと甚大な影響が出る」とクラーク氏は指摘する。「水の流れ、流量のピーク時期、水温、すべてが変わってしまう」。

 カナダのモントリオールにあるマギル大学のミシェル・バラー(Michel Baraer)氏は、「流れる水の総量も変わってしまうだろう。氷河に閉じ込められた水は簡単には気化しないが、液体になると別だ」と話す。

 山の上部の降水量が変わらなくても、液体の水が増えると蒸発プロセスが加速する。ダムを造っても流量減少の解決にはならない。「貯水湖から蒸発する量は、氷河から昇華(固体が直接気体に変化すること)する量よりもはるかに多い。現在ある天然の貯水システムの代役はまず務まらないだろう」とバラー氏は説明する。

◆水のピーク

 バラー氏によると、ペルーは既に水不足に直面する寸前だという。アンデス山脈の山岳氷河から流れ出る最大級の河川、サンタ川で融氷水がほとんど失われているためだ。

 このような問題が顕在化するのは数十年先のことだと考えられてきた。しかしバラー氏の研究チームは、衛星で計測した氷量データと水位観測所の水量データを基に、「サンタ川は既に氷河からの流量が減少する局面に移行している」と結論付けた。

「10、20、30年といったタイムスパンでは間に合わない。水供給問題の解決にもう時間が残されていないことは明白だ」とバラー氏は話す。

 これはまだ序章にすぎない。南アメリカは大部分が高山地帯や熱帯なので、気候変動による氷河縮小の影響を特に受けやすい。「ボリビアやチリ北部など、ペルーの隣接地域でも同じように流量変化が起きていると考えられる。注意深く調査を続けていきたい」。

 今回の研究成果は、12月上旬にアメリカのサンフランシスコで開催されたアメリカ地球物理学連合の会合で発表された。

Rick Lovett for National Geographic News

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