
■ぬるめのお風呂にゆっくり入る
体の中心部の体温を、「深部体温」といいます。深部体温は1日のうちで、1〜1.5度ほど上下します。夕方から夜にかけて最も高くなり、そのあと次第に下がって早朝に最低になります。深部体温が下がるときには、眠気が強くなります。さらに、寝つく前に一度、体温を上げておくと、そのあと体温が急激に下がってグッスリ眠れます。
ところが、冷え性の人は血液の循環が悪いため、深部体温を効率よく下げられません。これが冷え性による睡眠障害の大きな原因です。お風呂に入ると深部体温が上がるだけでなく、手足の血管が開いて血行がよくなります。体の中心の熱が血液で手足に運ばれ、手足で放熱されると、深部体温が下がりやすくなります。
寝床につく1時間ほど前にお風呂に入ると、寝つくときにちょうど体温が下がってきて眠りやすくなります。お湯の温度は、38〜40度のぬるめがお勧めです。お湯が熱すぎると交感神経が刺激されて、眠気が減ってしまうからです。浴槽に20分ほど入っていると、体がポカポカしてきて手足の血行が良くなります。
連続して20分も入っていると、のぼせることがあります。そんなときはかけ湯をしてまず入り、頭を洗ってまた入り、体を洗ってまた入るとよいでしょう。全身浴でなくても、半身浴でもかまいません。冬には体を冷まさないために、浴室を温めておく必要があります。
アロマの力を使うのも良いでしょう。冷え性を軽くしてくれるアロマとして、オレンジスイートやジュニパー、カモミールなどが知られています。日本には昔から檜風呂がありますが、ヒノキの香りにも同じような働きがあります。アロマオイルを2〜3滴、お湯にたらして、アロマバスを楽しんでください。
■布団の中を温める
電気毛布は手っ取り早く布団を温めてくれますが、睡眠の質の点から見ると、使い方に工夫が必要です。眠っている間は体温が下がることで、眠りが深くなります。ところが、電気毛布をつけっぱなしでいると体温が下がらず、眠りの質が悪くなってしまいます。眠る前に電気毛布で布団を温めておき、寝床につくときには電気毛布を切るか、タイマーで1時間後に切れるようにしてください。プログラムタイマー機能がある電気毛布なら、目覚める1〜2時間前から再びオンになるようにしても良いでしょう。
最近では省エネの観点から、湯たんぽを愛用する人が増えてきました。湯たんぽで体を温めると免疫力が上がる、という研究もあります。冬のカゼ対策にもなりますね。湯たんぽは電気毛布と違い、時間とともに温度が低くなります。そのため、体温の自然な低下を妨げず、睡眠の質を悪くしません。
湯たんぽでは、体の中心を温めるようにします。寝床につく1時間ほど前に、湯たんぽを布団の真ん中に置きます。お尻やおなか、太ももの前などにある大きな筋肉を温めると、筋肉の中の血液が温められ、それが手足の先まで熱を運んでくれます。眠るときも湯たんぽを腰のまわりに置いておけば、温かさが持続します。
■体を温めるものを食べる
基本的に、体温より温かいものを食べましょう。冷たいものを食べると、それだけで体温が奪われてしまうからです。サラダより温野菜、冷奴より湯豆腐がお勧めです。少なくとも、冷蔵庫から出したものは常温に戻してから食べましょう。
よく噛むことも大切です。噛むとあごの筋肉で熱が作られ、胃腸の働きも活発になります。リズムよく噛むと、脳のセロトニン神経が活発になり、日中の眠気も抑えられます。早食いで肥満ぎみの人は、一口に30回噛むことでダイエットを目指しましょう。
また、次に挙げる体を温める食材をとるように心がけてください。ただし、塩分は摂りすぎると血圧を上げるので、注意が必要です。
・冬が旬のものや根菜類:レンコンやゴボウ、ニンジンなど
・寒い地域でとれるもの:サケやタラ、リンゴなど
・色が黒いもの:昆布や黒ゴマ、玄米など
・乾燥したもの:高野豆腐や干しシイタケ、燻製など
・塩分が多いもの:漬物や味噌、塩辛など
・発酵したもの:納豆やぬか漬け、チーズなど
調理法でも、温めること以外の工夫が必要です。唐辛子やショウガ、コショウなどの香辛料を使ったり、片栗粉や葛粉でトロミをつけたりすると、体を温める料理に替わります。
【不眠・睡眠障害:坪田 聡】
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