夜空を華やかに飾る流れ星。その中でも、ある決まった時期に多くの流れ星が出現するのが「流星群」と言われるものです。
今回は、そんな流星群を科学的な視点からとらえてみたいと思います。
■流星群と彗星(すいせい)の深い関係
流星群の代表としては、毎年8月中旬のお盆時期に見られる「ペルセウス座流星群」や、2001年11月に大出現をして話題となった「しし座流星群」などが有名です。
これらに代表される流星群には、実は彗星と深い関係があるのです。まずは彗星から説明していきましょう。
彗星というと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
過去に観測されたものとしては、1986年に出現した「ハレー彗星」や1996年に出現した「百武彗星」、1997年に出現した「ヘール・ボップ彗星」などがありますが、このうち、1つぐらいは耳にしたことがあるのではないでしょうか。
中でも、76年周期で太陽の周りを回っているハレー彗星のように、一定周期で太陽の周りを周回している彗星のことを「周期彗星」と呼びます。そして、この周期彗星の存在こそが、流星群の出現と深い関係にあるのです。
■ 彗星は何からできている?
さて、これらの彗星は一体何からできているのでしょうか。
彗星の本体のことを「核」と言いますが、この核というのは、細かな岩石や金属など、たくさんの塵を含んだ氷の塊でできていると考えられており、その形状から一般的には「汚れた雪だるま」(最近では「凍った泥だんご」とも呼ばれます)とたとえて表現されます。
また、その大きさは、標準的なもので半径数km程度、大きなものになると半径50km程度に達するものもあります。
■ 彗星の進化
このような彗星は、太陽から遠く離れているときには、周囲の温度が低いため、核がほぼ裸の状態でいますが、それが太陽からある一定の距離(およそ2~3天文単位=約3億~4億5000万km)以下に近づいてくると、太陽の熱によって、氷が激しく気化を始め、それにより、核の氷の中に含まれていた塵が放出されます。
このとき、同じく気化した水やそのほかの物質が気体となって核の周りを取り囲むため、放出されたそれらの塵は、核から吹き出すこれらの気体の流れに乗り、核の引力に逆らって、ゆっくりと核から離れていきます。
その後、これらの塵は、その放出されたときの初速度の差や方向の違いにより、時間がたつにつれ、核からさらに離れていき、核の前後に長くのびるようになります。そして、それはやがて彗星の軌道上に広く散らばっていき、彗星が太陽に接近するたびに、この現象を繰り返すことによって、どんどんと進化していくわけです。
■ そして流星群の出現へ
勘のいい人はすでにお気づきだと思いますが、楕円(だえん)軌道をした周期彗星の中には、地球の軌道と1年に1回、同じ時期に交差するものがあります。すると、地球はその彗星の軌道上に散らばっている塵とぶつかり、それらが地球の大気の摩擦熱により燃えて発光することで、流れ星となって見えます。
このような仕組みにより、毎年決まった時期になると流星群が現れるというわけです。なお、地球上から肉眼で観測できる流星は、直径数mm以上の塵だと推定されています。
ちなみに、ペルセウス座流星群などは、長い時間をかけて彗星の軌道全体に塵が分散したため、毎年見ることができ、しし座流星群などは、まだその彗星軌道の一部にしか塵が散らばっていないため、大出現する年と少ない年があるわけです。
■ 流星群を見るときのコツ
流れ星が実際は同じ明るさで発光していたとしても、その発光地点と、それを観測している人との距離によってその明るさは当然異なって見えます。
もっと詳しく言うと、距離が2倍遠くなれば、その明るさは1/4倍になるというように、観測地点から見える明るさは、その距離の2乗に反比例するという法則があります。
このことから、暗くてもいいからたくさんの流星を見たい人は低い空を眺め、逆に、数は少なくても明るく光る流星を見たい人は高い空を見上げるのがポイントとなります。
■まとめ
今回は流星群がどのようにして作られるのかを、科学的な視点からとらえてみました。
こうして見てみると、彗星が長い年月をかけて撒き散らした塵のおかげで、地球では美しい流星群として見られるという、宇宙の長い歴史によって築き上げられた神秘を感じ取ることができますね。
(文/寺澤光芳)
●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。
【関連リンク】
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今回は、そんな流星群を科学的な視点からとらえてみたいと思います。
■流星群と彗星(すいせい)の深い関係
流星群の代表としては、毎年8月中旬のお盆時期に見られる「ペルセウス座流星群」や、2001年11月に大出現をして話題となった「しし座流星群」などが有名です。
これらに代表される流星群には、実は彗星と深い関係があるのです。まずは彗星から説明していきましょう。
彗星というと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
過去に観測されたものとしては、1986年に出現した「ハレー彗星」や1996年に出現した「百武彗星」、1997年に出現した「ヘール・ボップ彗星」などがありますが、このうち、1つぐらいは耳にしたことがあるのではないでしょうか。
中でも、76年周期で太陽の周りを回っているハレー彗星のように、一定周期で太陽の周りを周回している彗星のことを「周期彗星」と呼びます。そして、この周期彗星の存在こそが、流星群の出現と深い関係にあるのです。
■ 彗星は何からできている?
さて、これらの彗星は一体何からできているのでしょうか。
彗星の本体のことを「核」と言いますが、この核というのは、細かな岩石や金属など、たくさんの塵を含んだ氷の塊でできていると考えられており、その形状から一般的には「汚れた雪だるま」(最近では「凍った泥だんご」とも呼ばれます)とたとえて表現されます。
また、その大きさは、標準的なもので半径数km程度、大きなものになると半径50km程度に達するものもあります。
■ 彗星の進化
このような彗星は、太陽から遠く離れているときには、周囲の温度が低いため、核がほぼ裸の状態でいますが、それが太陽からある一定の距離(およそ2~3天文単位=約3億~4億5000万km)以下に近づいてくると、太陽の熱によって、氷が激しく気化を始め、それにより、核の氷の中に含まれていた塵が放出されます。
このとき、同じく気化した水やそのほかの物質が気体となって核の周りを取り囲むため、放出されたそれらの塵は、核から吹き出すこれらの気体の流れに乗り、核の引力に逆らって、ゆっくりと核から離れていきます。
その後、これらの塵は、その放出されたときの初速度の差や方向の違いにより、時間がたつにつれ、核からさらに離れていき、核の前後に長くのびるようになります。そして、それはやがて彗星の軌道上に広く散らばっていき、彗星が太陽に接近するたびに、この現象を繰り返すことによって、どんどんと進化していくわけです。
■ そして流星群の出現へ
勘のいい人はすでにお気づきだと思いますが、楕円(だえん)軌道をした周期彗星の中には、地球の軌道と1年に1回、同じ時期に交差するものがあります。すると、地球はその彗星の軌道上に散らばっている塵とぶつかり、それらが地球の大気の摩擦熱により燃えて発光することで、流れ星となって見えます。
このような仕組みにより、毎年決まった時期になると流星群が現れるというわけです。なお、地球上から肉眼で観測できる流星は、直径数mm以上の塵だと推定されています。
ちなみに、ペルセウス座流星群などは、長い時間をかけて彗星の軌道全体に塵が分散したため、毎年見ることができ、しし座流星群などは、まだその彗星軌道の一部にしか塵が散らばっていないため、大出現する年と少ない年があるわけです。
■ 流星群を見るときのコツ
流れ星が実際は同じ明るさで発光していたとしても、その発光地点と、それを観測している人との距離によってその明るさは当然異なって見えます。
もっと詳しく言うと、距離が2倍遠くなれば、その明るさは1/4倍になるというように、観測地点から見える明るさは、その距離の2乗に反比例するという法則があります。
このことから、暗くてもいいからたくさんの流星を見たい人は低い空を眺め、逆に、数は少なくても明るく光る流星を見たい人は高い空を見上げるのがポイントとなります。
■まとめ
今回は流星群がどのようにして作られるのかを、科学的な視点からとらえてみました。
こうして見てみると、彗星が長い年月をかけて撒き散らした塵のおかげで、地球では美しい流星群として見られるという、宇宙の長い歴史によって築き上げられた神秘を感じ取ることができますね。
(文/寺澤光芳)
●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。
【関連リンク】
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