数々のアニメ制作を手がけてきた沖浦啓之監督が、7年もの歳月をかけた待望の新作『ももへの手紙』。
これまでハードテイストなアニメ中心だった同氏は、イメージを一変し、瀬戸内の美しい島々と木造建築の町並み、のどかで懐かしい日本の原風景を描いている。父を亡くした事をきっかけに、母とふたり瀬戸内海の汐島に引っ越してきた「もも」は、父のことで悩み、新しい土地になじめずにいた。そんな折、突如あらわれたイワ・マメ・カワの3妖怪と出会い、変化が訪れる。
豊かな自然とやさしい人々が生きる瀬戸内の小さな島で、ももに訪れる不思議な日々を描いた家族の愛の物語は、アニメーション制作は海外でも高い評価を得る『プロダクション I.G』。そして、『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『AKIRA』など、日本が世界に誇る作品を手がけてきた最高のスタッフが集結し、モデルとなった広島県・大崎下島の協力も経て完成。
全国公開を4月21日にひかえた今作について、原案・脚本もつとめた沖浦啓之監督にインタビューを行った。
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沖浦啓之監督(以下、沖浦):主人公は、小学6年生の多感な年頃の女の子ですが、その周囲の大人や不思議な存在たちにも焦点をあてて物語をすすめていきます。
亡くなった方がいて、遺された家族がいる。家族が一生懸命生きていくのを、先立った方が空から見守っていたらいいなぁ、と。子供たちと、子供たちをがんばって育てようとするお母さんの姿を、お父さんがちゃんと見守ってくれていたら…。そうあれば、救われるなと。
それを映画として表現するべく、構想しました。はじめに『お母さん』の存在があって、『お母さんと女の子』が中心の話になっていきました。
―――今回、原案・脚本・監督でこの映画に携わられましたが、制作時のエピソードを教えてください。
沖浦:この脚本は、はじめ別の方と協力し、あとを引き継いで完成させたかたちになります。当初は1時間半くらいの上映時間を想定してましたが、脚本が出来上がってみると2時間をゆうに越えそうなボリュームになっていました。それを調節して、2時間ジャストに削ってまとめるのは大変でしたね。テーマ曲などすべて含めたリミットですから、物語全体を通して、いそがしくならないように工夫しています。
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―――お母さん役はタレントの優香さんというのが印象的だったのですが、配役について教えてください。
沖浦:お母さん役の優香さんには是非お願いしたくてピンポイントでオファーしました。
ももの役に関してはオーディションも行いましたが、美山加恋さんがずば抜けて表現力があり、イメージにあっていたのでお願いしました。
―――わが道を行く妖怪たちはどうですか?
沖浦:イワ役を演じられる役者さんはなかなか見つからないだろうなと思っていましたが、西田敏行さんの別の仕事を拝見したとき「このムードだ!」と。試しで声だけの素材を聞いてみたところ、もうイワがしゃべっているようにしか聞こえなくて(笑)イワ役に合う方はほかに居ないと直感したので、オファーしてOKをいただきました。
イワ役が決まったところで、続いてカワ役とマメ役を探しました。鍵を握る3人であり、名優・西田さんとのやりとりが多い役どころはかなりの実力が必要になると感じたので、カワ役に山寺宏一さん、マメ役にチョーさんでお願いしました。
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―――各キャストの演技をみて、監督はいかがでしたか?
沖浦:役者さんを知った上でオファーしていますので、こちらは大まかなストーリーとイメージだけお伝えして、あとは各自の個性を活かす役作りをしていただきました。
変に凝った役作りをするより、自然さを求めたんです。とても柔軟にこちらの要望に応えていただきましたね。
―――主題歌の「ウルワシマホロバ~美しき場所~」ですが、出来上がった曲はどうでしたか?
沖浦:「すばらしい!」の一言ですね。
最初にハミングで歌っている、歌詞が無い状態の仮データを聞いて良い曲になりそうだと直感し、さらに完成した曲を聞いた時は、誠実に作品に寄り添っている歌だなぁ、と感激しました。
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沖浦:実は、個人的には絵本や児童文学が好きということもあり、そちらの範囲で映画が作りたいと思っていたので、今回の機会で制作することが叶いましたね。
例えば、「カッレくんシリーズ」のリンドグレーン作品のような海外児童文学や国内作家さんの作品を読んだり観たりして、影響を受けています。
児童文学の魅力のひとつは、大人と子供の関係を子供目線で見ているところで、見られている大人たちを面白く描けるところだと思うんです。そんなところもこの映画に少し盛り込んでいます。
―――これから映画を観に行く方たちへ、メッセージをお願いします
沖浦:家族の絆の物語ですが、感動する真面目な作品を期待している方には申し訳ない気がするほど(笑)、わりと気楽な明るい作品ですので、肩の力を抜いてご覧ください。
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『ももへの手紙』
4月21日(土)全国ロードショー
<スタッフ>
原案・脚本・監督:沖浦啓之
作画監督:安藤雅司
美術監督:大野広司
音楽:窪田ミナ
主題歌:原由子「ウルワシマホロバ ~美しき場所~」
<キャスト>
宮浦もも役/美山加恋
宮浦いく子役/優香
イワ役/西田敏行
カワ役/山寺宏一
マメ役/チョー
<ストーリー>
「ももへ」とだけ書かれた手紙を遺し、お父さんは天国に旅立ってしまった。
心ない言葉をぶつけ、仲直りしないまま父を亡くしたももは、想いを抱えたまま、
母いく子と瀬戸内の島に移り住む。
慣れない生活に戸惑うももだったが、不思議な妖怪”見守り組”のイワ、カワ、マメと出会う。食いしん坊でわがまま、でも愛嬌たっぷりの彼らには、実は大切な使命があった・・・・・・。
もものために明るく振舞いながら忙しくする母いく子。そんな中、ちょっとのすれ違いからももといく子はケンカをしてしまい、さらにいく子は病に倒れてしまう。母が自分の為に無理をしていたこと、母の想いに気づいたももは、”大切な想いを伝える”奇跡を起こしていく――。
(c)2012『ももへの手紙』製作委員会
■関連リンク
・ももへの手紙
CloseUp NetTube 04月19日18時11分
「親子の絆と家族のあたたかさを描く物語『ももへの手紙』沖浦啓之監督インタビュー」記事詳細はコチラ
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