新たなコンピューターモデルによると、連星系の惑星は重力の作用で“ピンポン玉”のようにバウンドする可能性がある。100万年ほどバウンドを続け、最終的には星間空間へ放出されるという。
惑星系の形成過程で原始惑星がはじき出され、宇宙空間を“一人ぼっち”で彷徨う場合がある。単独の恒星を公転する複数惑星の重力相互作用によるもので、「浮遊惑星」は銀河系に数千億個もあると主張する学者もいる。
今回、複数のコンピューター・シミュレーションを組み合わせたところ、特定タイプの連星系では、「浮遊惑星」が簡単に生まれない可能性が判明した。
連星系の公転軌道から外れた不運な惑星は、もう一方の恒星の方に飛び、激しく変動するジグザグ状の軌道を公転し始めるという。そして再び元の恒星の周囲に戻ってくる。重力によるバウンドは100万年ほど続き、ようやく惑星は連星系から完全に放出される。
共同研究者でイギリス、ケンブリッジ大学の天文学者ディミトリ・ベラス(Dimitri Veras)氏は、「同じ恒星を公転している別の惑星が接近すると、バウンドが始まる。はじき飛ばされた惑星は動きが速くなりすぎて、どちらの恒星の軌道にも長期間安定して留まっていられなくなる」と話す。
◆温度変化の激しい惑星環境
新しいモデルによると、連星間の距離が太陽と冥王星の距離(平均59億キロ)の6~25倍の場合に、バウンド現象が発生する可能性が高い。それより近い場合は、NASAのケプラー宇宙望遠鏡で発見された系外惑星「ケプラー16b」のように、両方の恒星の周囲を安定した軌道で公転できる。
「25倍という数字は、天の川銀河の連星系の最大距離と同程度だ。惑星が適切な位置にあれば、ほとんどのタイプの連星系でバウンドが起きても不思議ではない」とベラス氏は推測している。
ベラス氏のチームでは、少なくとも一方の恒星が複数の惑星を持つ連星系をシミュレーションで調べた。このモデルによると、重力によるバウンドは惑星系の進化過程のどの時点でも始まる可能性があるという。
当然のことながら、“ピンポン惑星”の環境は厳しい。2つの恒星間を移動するときに気温が激しく上下するためだ。
ほとんどの場合、バウンドする惑星は離心率の高い多様な軌道を持つため、表面温度が大幅に変動することになる。
惑星に地球のような大気がある場合は、恒星に接近するたびに温室効果で気温が急上昇するだろう。
◆ピンポン惑星は珍しい?
「天体が2つの天体間を移動するというアイデアは以前からあった」と、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの上級天体物理学者マシュー・ホルマン氏は述べる。同氏は今回の研究には参加していない。「例えば、地球近傍軌道と月に近い軌道の間で探査機を移動させる安価な方法として、この現象の利用が提案されたこともある」。
最近では、銀河系での惑星のバウンドが一般的かどうかが研究対象になっている。 「連星間の距離や一方の恒星に複数の惑星があることなど、惑星のバウンドには特別な条件が必要だ。実際のところ、めったに起こらないだろう」とホルマン氏は考えている。
また、バウンドする期間は比較的短いので確認は難しいかもしれない。「例えば、地球の公転は約45億年間ずっと安定している。一方、惑星がバウンドする期間はわずか100万年だ。その後は別の惑星との相互作用で放出されるか、どちらかの恒星と衝突してしまうだろう」。
今回の研究はWebサイト「arXiv.org」に1月31日付けで投稿された。「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」誌にも掲載が予定されている。
Andrew Fazekas for National Geographic News
【関連記事】
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・超新星爆発の生き残りが浮遊惑星に?
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・最小の太陽系外惑星を発見
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惑星系の形成過程で原始惑星がはじき出され、宇宙空間を“一人ぼっち”で彷徨う場合がある。単独の恒星を公転する複数惑星の重力相互作用によるもので、「浮遊惑星」は銀河系に数千億個もあると主張する学者もいる。
今回、複数のコンピューター・シミュレーションを組み合わせたところ、特定タイプの連星系では、「浮遊惑星」が簡単に生まれない可能性が判明した。
連星系の公転軌道から外れた不運な惑星は、もう一方の恒星の方に飛び、激しく変動するジグザグ状の軌道を公転し始めるという。そして再び元の恒星の周囲に戻ってくる。重力によるバウンドは100万年ほど続き、ようやく惑星は連星系から完全に放出される。
共同研究者でイギリス、ケンブリッジ大学の天文学者ディミトリ・ベラス(Dimitri Veras)氏は、「同じ恒星を公転している別の惑星が接近すると、バウンドが始まる。はじき飛ばされた惑星は動きが速くなりすぎて、どちらの恒星の軌道にも長期間安定して留まっていられなくなる」と話す。
◆温度変化の激しい惑星環境
新しいモデルによると、連星間の距離が太陽と冥王星の距離(平均59億キロ)の6~25倍の場合に、バウンド現象が発生する可能性が高い。それより近い場合は、NASAのケプラー宇宙望遠鏡で発見された系外惑星「ケプラー16b」のように、両方の恒星の周囲を安定した軌道で公転できる。
「25倍という数字は、天の川銀河の連星系の最大距離と同程度だ。惑星が適切な位置にあれば、ほとんどのタイプの連星系でバウンドが起きても不思議ではない」とベラス氏は推測している。
ベラス氏のチームでは、少なくとも一方の恒星が複数の惑星を持つ連星系をシミュレーションで調べた。このモデルによると、重力によるバウンドは惑星系の進化過程のどの時点でも始まる可能性があるという。
当然のことながら、“ピンポン惑星”の環境は厳しい。2つの恒星間を移動するときに気温が激しく上下するためだ。
ほとんどの場合、バウンドする惑星は離心率の高い多様な軌道を持つため、表面温度が大幅に変動することになる。
惑星に地球のような大気がある場合は、恒星に接近するたびに温室効果で気温が急上昇するだろう。
◆ピンポン惑星は珍しい?
「天体が2つの天体間を移動するというアイデアは以前からあった」と、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの上級天体物理学者マシュー・ホルマン氏は述べる。同氏は今回の研究には参加していない。「例えば、地球近傍軌道と月に近い軌道の間で探査機を移動させる安価な方法として、この現象の利用が提案されたこともある」。
最近では、銀河系での惑星のバウンドが一般的かどうかが研究対象になっている。 「連星間の距離や一方の恒星に複数の惑星があることなど、惑星のバウンドには特別な条件が必要だ。実際のところ、めったに起こらないだろう」とホルマン氏は考えている。
また、バウンドする期間は比較的短いので確認は難しいかもしれない。「例えば、地球の公転は約45億年間ずっと安定している。一方、惑星がバウンドする期間はわずか100万年だ。その後は別の惑星との相互作用で放出されるか、どちらかの恒星と衝突してしまうだろう」。
今回の研究はWebサイト「arXiv.org」に1月31日付けで投稿された。「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」誌にも掲載が予定されている。
Andrew Fazekas for National Geographic News
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