エコノミック・クラブ・オブ・シカゴのディナーイベントにて、U2のボノが自ら主催するチャリティ団体「ONE」の貧困とHIV/AIDS危機に対する取り組みについて語った。
米現地時間12月6日木曜日に開催されたエコノミック・クラブ・オブ・シカゴのディナーイベントにて、ボノは自ら主催者を務めるチャリティ団体ONEが「世界の貧しい人々のためのNRA」になってほしいと述べ、その理由を説明した。
「NRA(アメリカの全国復興庁)という言葉を聞いてどう思うかはさておき——私だってこの機関はあまり好きじゃない——NRAというのは非常によくできた組織です。世界の貧しい人々にとってONEがこういう存在になってくれることを願います」米現地時間12月6日木曜日の夜、エコノミック・クラブ・オブ・シカゴ(ECC)が主催する正装のプライベートディナーイベント中に行われたアリエル・インヴェストメント社のメロディ・ホブソン社長兼ECC議長との白熱した議論においてボノはこのように発言した。「ONEキャンペーンの目的は、世界でもっとも弱い立場にある人々の生活を少しでも楽にしてくれる法律の実現を阻む人がいれば、その人物を特定し、その人の事務所の外でキャンプをしてまで抗議することにあります」
U2のフロントマンがNRAにならおうとするのは不思議かもしれないが、ボノの実用主義的かつビジネスライクなアプローチによって、ボビー・シュライバーとともに設立した非営利団体は数多くの成功を収めてきた。「現在の会員数は1千万人で、そのうちの300万人はアフリカにいます。この数は徐々に伸び、やがて北半球よりも南半球の会員数が多くなるでしょう」とボノは言った。この14年間、ボノは世界的な有力者たちに積極的に訴え続けることで、情報と資金面で政府政策を支えてきた。芸術を追求する一方、非営利団体をビジネス的に運営するというストレスに満ちた2つの役割をこなし、結果を出すという形で成功を収められたのは、ウォーレン・バフェットなどの有力者からバンドメンバーにいたるまで、あらゆる人々から受けた最高のアドバイスとサポートのおかげ、と6日木曜日にボノは感謝を述べた。
「病気との戦いにおける医療の歴史上唯一かつ最大の介入は、アメリカのリーダーシップのもとで実施されたHIV/AIDSとの戦いです。それはジョージ・W・ブッシュ大統領がはじめ——ここが非常に重要です——オバマ大統領が引き継いだことです。実際、オバマ大統領の任期のほうが長かったため、彼がより多く費用を負担した結果になりました」とボノは言った。「民主党と共和党という2党のサポートのおかげで——これはかなり大切なんですが、ちゃんとした推論にもとづいていますから、ご安心ください——豊かではない国、要するにアフリカを中心とした発展途上国では、2千万人が抗ウィルス剤での治療を受けているのです。アメリカの人々は、協力すればどんなことを成し遂げられるかを決して忘れてはいけません」
近年、ONEはアフリカにおける極度の貧困とHIV/AIDSに立ち向かうため、”Poverty is Sexist(貧困は性差別)”と名付けたキャンペーンを立ち上げた。それに関してボノは「現場に満足している時ではない」と述べた。「極度の貧困は最初に、そして最悪の形で女性を襲います」ボノは言った。「それが現実です。原因は教育——1.3億人の少女は、自分が少女だからという理由だけで学校に行くことができません——そして衛生にあります。HIV/AIDSは今でも女性の死因ナンバー1ですし、サハラ砂漠以南のアフリカでは、少女がHIV/AIDSに感染する確率は若い男性の2倍です。毎週7千人もの女性が新たにHIV/AIDに感染しているのが現状なんです」
「女性は土地を耕すことはできますが、一部の地域では所有は禁止されています」ボノは続けた。「お金を稼ぐことはできる。でも、銀行に預けることはできません。だから貧困というものは……性差別であると同時に人種差別でもあるのです。貧困は差別的で、疎外できる存在を探しているのです」
さらにボノは発展におけるアメリカのサポートの重要性を強調し、提出された削減案と戦い、資金が断たれることによって危惧される事態について警鐘を鳴らしたアメリカ連邦議を高く評価した。「HIV/AIDSのようなウィルスが相手では、やるかやられるかのどちらかしかないのです。それがこの感染症のやり方なんです」ボノは言った。「HIV/AIDSには推進力とパワーがある。ウィルスとの戦いは、アメリカが第二次世界大戦中にとった介入策ほど大規模なものなのでないといけません」
問題解決という課題は、クリエイターとしてのボノの人生の大部分を占めてきた。ONEと姉妹団体の(RED)はAIDS危機への意識を高め、ブランドとパートナーシップを結ぶことで企業からの寄付を得ている。「私にとって歌は組織のような存在です。わかりますか? 両者には一貫性があるんです」ボノは言った。「歌のサビというのは、明確な思考なんです。私は(RED)とONEを歌としてとらえています。ビジネスは歌なんです」
「ビョークというアイスランドの天才シンガーをご存知ですか? ビョークは私が愛してやまない歌い手の一人です」ボノはさらに続けた。「ビョークはよく言っていました。『アイスランドでは、ミュージシャンやアーティストは大工や配管工と同じ存在』だと。私の考えとまったく同じです。私にとって歌は問題を解決してくれる何かなんです。うまく説明できませんが、他のアーティストのように単なるビジネスとして見下すことはできない」
ボノ、2018年12月6日、エコノミック・クラブ・オブ・シカゴにて: Photo: Adam Blaszkiewicz/The Economic Club of Chicago
ボノが言うには、音楽のビジネスとなると、これは現代のアーティストにとってさらに難しい問題だそうだ。とりわけ、ストリーミング主流の時代にアーティストとして生計を立てるなら。
「物事のあり方からして、お金に変換して考えるのは、簡単なことではありません。再生回数の多さによって報酬を受けるなら話は別ですが」10代の若者が数え切れないほど同じ曲を再生することに言及しながらボノは言った。「私は今もそうなんです。同じ曲を100回聴きます。ストリーミングが主流の世界では、結構目立つんです」でも、誰もがそうするわけではない、と付け加えた。「定期購読サービスの場合、再生回数なんて関係ありません。Netflixでは視聴者が動画を何回再生したかによって報酬を変えることはありませんから。でも物事は変わっていくでしょう。より公平になり、音楽業界はさらに進化すると思います」
様々な話題について会話が繰り広げられるなか、ボノは結成当時の初期のU2(「きれいなゴミ」と揶揄されたころ)についても語り、いかにして怒りと摩擦が原動力になったかについて語ってくれた——ジ・エッジがいつもなだめてくれたことも(「視覚と手を使うプロにはケンカを売ったらいけないって学んだよ」とジョークをとばした)。若き日の怒りは今でもボノにとっての原動力ではあるが、それは決まってポジティブな影響を残す。
「私をいらだたせること、世界中のどんなことよりも腹がたつのは、私をはじめとする人間の将来性を無駄遣いすることです。愛を定義する必要があるとしたら、私はそれを自分と他者の将来性に気づくことだと思います。それ以上でもそれ以下でもありません」ボノは言った。「バンドメンバー全員にベストを尽くしてほしい、結婚相手、あるいは子どもとの関係もそう……貧困による絶望や極度の貧困状態ほど人間の将来性が無駄遣いされている状況はありません。そして、前にも言っていますが——紋切り型になってないといいけど——住む場所によってその人の生死が決まるのはおかしいんです。そう思うと、ほんとうにやり切れない」
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米現地時間12月6日木曜日に開催されたエコノミック・クラブ・オブ・シカゴのディナーイベントにて、ボノは自ら主催者を務めるチャリティ団体ONEが「世界の貧しい人々のためのNRA」になってほしいと述べ、その理由を説明した。
「NRA(アメリカの全国復興庁)という言葉を聞いてどう思うかはさておき——私だってこの機関はあまり好きじゃない——NRAというのは非常によくできた組織です。世界の貧しい人々にとってONEがこういう存在になってくれることを願います」米現地時間12月6日木曜日の夜、エコノミック・クラブ・オブ・シカゴ(ECC)が主催する正装のプライベートディナーイベント中に行われたアリエル・インヴェストメント社のメロディ・ホブソン社長兼ECC議長との白熱した議論においてボノはこのように発言した。「ONEキャンペーンの目的は、世界でもっとも弱い立場にある人々の生活を少しでも楽にしてくれる法律の実現を阻む人がいれば、その人物を特定し、その人の事務所の外でキャンプをしてまで抗議することにあります」
U2のフロントマンがNRAにならおうとするのは不思議かもしれないが、ボノの実用主義的かつビジネスライクなアプローチによって、ボビー・シュライバーとともに設立した非営利団体は数多くの成功を収めてきた。「現在の会員数は1千万人で、そのうちの300万人はアフリカにいます。この数は徐々に伸び、やがて北半球よりも南半球の会員数が多くなるでしょう」とボノは言った。この14年間、ボノは世界的な有力者たちに積極的に訴え続けることで、情報と資金面で政府政策を支えてきた。芸術を追求する一方、非営利団体をビジネス的に運営するというストレスに満ちた2つの役割をこなし、結果を出すという形で成功を収められたのは、ウォーレン・バフェットなどの有力者からバンドメンバーにいたるまで、あらゆる人々から受けた最高のアドバイスとサポートのおかげ、と6日木曜日にボノは感謝を述べた。
「病気との戦いにおける医療の歴史上唯一かつ最大の介入は、アメリカのリーダーシップのもとで実施されたHIV/AIDSとの戦いです。それはジョージ・W・ブッシュ大統領がはじめ——ここが非常に重要です——オバマ大統領が引き継いだことです。実際、オバマ大統領の任期のほうが長かったため、彼がより多く費用を負担した結果になりました」とボノは言った。「民主党と共和党という2党のサポートのおかげで——これはかなり大切なんですが、ちゃんとした推論にもとづいていますから、ご安心ください——豊かではない国、要するにアフリカを中心とした発展途上国では、2千万人が抗ウィルス剤での治療を受けているのです。アメリカの人々は、協力すればどんなことを成し遂げられるかを決して忘れてはいけません」
近年、ONEはアフリカにおける極度の貧困とHIV/AIDSに立ち向かうため、”Poverty is Sexist(貧困は性差別)”と名付けたキャンペーンを立ち上げた。それに関してボノは「現場に満足している時ではない」と述べた。「極度の貧困は最初に、そして最悪の形で女性を襲います」ボノは言った。「それが現実です。原因は教育——1.3億人の少女は、自分が少女だからという理由だけで学校に行くことができません——そして衛生にあります。HIV/AIDSは今でも女性の死因ナンバー1ですし、サハラ砂漠以南のアフリカでは、少女がHIV/AIDSに感染する確率は若い男性の2倍です。毎週7千人もの女性が新たにHIV/AIDに感染しているのが現状なんです」
「女性は土地を耕すことはできますが、一部の地域では所有は禁止されています」ボノは続けた。「お金を稼ぐことはできる。でも、銀行に預けることはできません。だから貧困というものは……性差別であると同時に人種差別でもあるのです。貧困は差別的で、疎外できる存在を探しているのです」
さらにボノは発展におけるアメリカのサポートの重要性を強調し、提出された削減案と戦い、資金が断たれることによって危惧される事態について警鐘を鳴らしたアメリカ連邦議を高く評価した。「HIV/AIDSのようなウィルスが相手では、やるかやられるかのどちらかしかないのです。それがこの感染症のやり方なんです」ボノは言った。「HIV/AIDSには推進力とパワーがある。ウィルスとの戦いは、アメリカが第二次世界大戦中にとった介入策ほど大規模なものなのでないといけません」
問題解決という課題は、クリエイターとしてのボノの人生の大部分を占めてきた。ONEと姉妹団体の(RED)はAIDS危機への意識を高め、ブランドとパートナーシップを結ぶことで企業からの寄付を得ている。「私にとって歌は組織のような存在です。わかりますか? 両者には一貫性があるんです」ボノは言った。「歌のサビというのは、明確な思考なんです。私は(RED)とONEを歌としてとらえています。ビジネスは歌なんです」
「ビョークというアイスランドの天才シンガーをご存知ですか? ビョークは私が愛してやまない歌い手の一人です」ボノはさらに続けた。「ビョークはよく言っていました。『アイスランドでは、ミュージシャンやアーティストは大工や配管工と同じ存在』だと。私の考えとまったく同じです。私にとって歌は問題を解決してくれる何かなんです。うまく説明できませんが、他のアーティストのように単なるビジネスとして見下すことはできない」
ボノ、2018年12月6日、エコノミック・クラブ・オブ・シカゴにて: Photo: Adam Blaszkiewicz/The Economic Club of Chicago
ボノが言うには、音楽のビジネスとなると、これは現代のアーティストにとってさらに難しい問題だそうだ。とりわけ、ストリーミング主流の時代にアーティストとして生計を立てるなら。
「物事のあり方からして、お金に変換して考えるのは、簡単なことではありません。再生回数の多さによって報酬を受けるなら話は別ですが」10代の若者が数え切れないほど同じ曲を再生することに言及しながらボノは言った。「私は今もそうなんです。同じ曲を100回聴きます。ストリーミングが主流の世界では、結構目立つんです」でも、誰もがそうするわけではない、と付け加えた。「定期購読サービスの場合、再生回数なんて関係ありません。Netflixでは視聴者が動画を何回再生したかによって報酬を変えることはありませんから。でも物事は変わっていくでしょう。より公平になり、音楽業界はさらに進化すると思います」
様々な話題について会話が繰り広げられるなか、ボノは結成当時の初期のU2(「きれいなゴミ」と揶揄されたころ)についても語り、いかにして怒りと摩擦が原動力になったかについて語ってくれた——ジ・エッジがいつもなだめてくれたことも(「視覚と手を使うプロにはケンカを売ったらいけないって学んだよ」とジョークをとばした)。若き日の怒りは今でもボノにとっての原動力ではあるが、それは決まってポジティブな影響を残す。
「私をいらだたせること、世界中のどんなことよりも腹がたつのは、私をはじめとする人間の将来性を無駄遣いすることです。愛を定義する必要があるとしたら、私はそれを自分と他者の将来性に気づくことだと思います。それ以上でもそれ以下でもありません」ボノは言った。「バンドメンバー全員にベストを尽くしてほしい、結婚相手、あるいは子どもとの関係もそう……貧困による絶望や極度の貧困状態ほど人間の将来性が無駄遣いされている状況はありません。そして、前にも言っていますが——紋切り型になってないといいけど——住む場所によってその人の生死が決まるのはおかしいんです。そう思うと、ほんとうにやり切れない」
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